はじめに

モーショングラフィックスは、ただ見た目をリッチにするためのものではありません。特に操作説明動画のような「正しく理解してもらう」ことが重要な場面では、視聴者の注意を誘導し、感情を整え、迷わせずに操作へとつなげる効果を持っています。

今回は、私が実際に動画制作を行う中で気づいた「心理的負担を軽減するモーション設計」について、実践と考察をまとめます。

1.モーションが担う心理的効

・目線を誘導する
アイコンやメッセージなど、動画の中で特に見てほしい箇所に視線を誘導する手段として、ズームインやハイライトといったモーションを用います。

・安心感を与える
唐突な画面切り替えは視聴者にストレスを与えます。フェードイン・フェードアウトのような緩やかなモーションがあることで、「急に変わった」と感じる心理的負担を抑えられます。

・情報の優先度を示す
静止した画面内に複数の要素があると、どれを見ればいいかわからなくなります。最初にアニメーションで登場する要素や、動きが加えられた情報は、相対的に「重要」だと認識されやすくなります。

・人の注意を整える
視覚的な変化が整然と繋がっていることで、脳が次に注目すべきポイントを自然に受け入れやすくなります。これは「感情を落ち着ける」こととは別に、情報の整理や受け取りやすさを高める効果です。

2.動画制作で実際に活用しているモーションの例

・画面やテロップの切り替えをフェードイン・フェードアウトでつなぐ
→ 切り替えの衝撃を和らげ、落ち着いた視聴体験をつくります。

・場面の切り替わりでタイトルをスライドイン
→ 次のセクションへの移行を意識させ、動画の構造理解を助けます。

・強調したい箇所(ボタンやアイコン、メッセージなど)をキャプチャで切り取りズーム表示
→ どこを操作すればいいのかが一目でわかり、注視を誘導できます。

・画像の出力をフェードインでなめらかにする
→ 画像の登場が唐突にならず、自然に視線を移動できるようにします。

実際の効果映像

テロップのフェードイン
タイトルのスライドイン
強調箇所のズーム
画像のフェードイン

3.制作現場での気づき:切り替えモーションが変える視聴体験

動画制作を始めた当初、私は場面の切り替えや画像の表示、テロップの切り替えなどの一部に、モーションを入れずに切り替える場面がありました。そのため、視聴中に不意に変化が訪れる場面があり、映像のテンポや印象にばらつきが出ていました。
実際に動画を見た人からは、
「画面の切り替えが急で少し驚く」「テロップがすぐに切り替わって読みづらいときがある」
といったフィードバックがありました。

これをきっかけに、切り替わりのモーションを意図を持って活用し、視聴の流れが自然に感じられるよう、調整を繰り返しました。

結果として、
・映像全体の流れが落ち着いて見えるようになった
・テロップや画面の切り替えが理解しやすくなった
・不安感や唐突さが軽減された
という反応をもらえるようになりました。

この経験から、モーションの有無や使い方が視聴者の感じ方に大きく影響することを実感しました。モーションは装飾ではなく、視聴者の受け取りやすさを支える重要な設計要素だと考えるようになりました。

まとめ

モーショングラフィックスは単なる視覚的な演出ではなく、視聴者の心理に働きかける設計要素です。ズーム・スライド・フェードといった基本的なモーションでも、使い方次第で動画の印象や伝わり方は大きく変わります。

私自身の制作体験からも、視聴者の視線や感情、理解のしやすさを意識したモーションの設計が、安心感や集中力、理解度に大きく影響することを実感しました。

重要なのは、すべての動きを複雑にすることではなく、必要な箇所に必要な変化を与えること。視聴者にとって自然で受け入れやすいモーションが「伝える」を「伝わる」に変える鍵になります。

参考サイト

モーショングラフィックスとは?作成の流れや活用方法を紹介(NoKidブログ)
https://nokid.jp/blog/6770/?utm_source=chatgpt.com


UXアニメーションの実行:持続時間とモーション特性
https://www.nngroup.com/articles/animation-duration/?utm_source=chatgpt.com

注意と理解を促すアニメーション
https://www.nngroup.com/articles/animation-usability/?utm_source=chatgpt.com


目立たず自然な動きによるUX改善の視点
https://www.concretecms.com/about/blog/web-design/using-animation-to-improve-ux?utm_source=chatgpt.com